タイトル: 帝国の聖戦 上・下

上下巻合計で文庫版1200ページクラスのボリュームを一気に読破。そしてまた、ずいぶんと久しぶりに「仮想戦記」を読んだ。日本の立場が逆転(勝利国になった)第二次大戦モノは結構あるが、この本は実に日露戦争、第一次世界大戦から歴史の流れを変えて、第二次大戦の経緯を完全に逆転させた、というかなりの意欲作。

拡散しがちな話を、父母が違う(複雑な)架空の3兄弟に集約させているので(それに加えて、国家指導者や著名な将軍クラスもかなり拾っている)、話がどうしても「ご都合的」なのは否めないが(世界中を次々と移る戦場で、常にこの3兄弟と戦艦「飛騨」――かつてのポケット戦艦「ドイッチュラント」――が勝敗を分けるキーになったりする)、それを”お約束”として飲み込み、また、政治的ファクターがほとんど捨象されている点にも納得できるなら、次々と展開していく事態の先を知りたくなって、グングンと読み進められる。この展開力と筆力は確かなモノ。結末がやや「ひねりすぎ」とは思うが、これはそこまでのストーリーの秀逸を慮れば、許容範囲内(荒唐無稽というところまではいってないし)。

佐藤大輔氏の作品群には届かないものの(ただし氏は近年続編をほとんど書かないのが……)、緻密に構築されたオリジナルの歴史を読むことができて、結構満足している。

著者: 吉田親司

評価: 4

評価日付: 2009-4-30